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外国人と日本人がお互い理解し合えるやさしい施設のために~やさしい日本語~

2023.11.01

海外介護人材を受入れていらっしゃる施設様で、「外国人スタッフと日本語でうまくコミュニケーションができない…」「外国人スタッフは何度教えても覚えてくれない…」など、コミュニケーションについてのお悩みはありませんか。

そこで、今回は最近外国人との共生のため地域社会などで注目を集めている「やさしい日本語」についてお話したいと思います。

目次

「やさしい日本語」とは?

「やさしい日本語」というのは、文字通り、日本語を母語としない人にも伝わりやすい簡単な日本語のことです。1995年の阪神・淡路大震災以降、日本に暮らす日本語に不慣れな外国人であっても、災害時に正しい情報を得て適切な行動をとり、安全を確保できるように、考案されたものです。

外国人には英語で伝えればよいのでは…?

こう思う方も多いかもしれません。

しかし、日本に暮らす外国人の国籍は約200か国、約8割がアジアから来日しています。このため英語を話さない外国人はとても多いです。残念ながら日本人も英語を話す人はあまり多くありません。そこで、大切な情報を伝え合うための共通語として、日本語が初級レベルでも理解できるように簡単な表現に言い換える「やさしい日本語」が注目され、地域社会だけでなく外国人材が働く様々な業界の現場でもこの考え方が用いられるようになりました。

さて、外国人介護人材について見てみると、多くの人は国で非常に長い時間をかけて日本語や介護・看護等の勉強をして来日しています。それでも、日本人の自然な日本語を聞き、理解することはとても難しいことです。外国人スタッフと円滑なコミュニケーションをとるためには、彼らの努力だけではなく、受け入れる日本人の協力も必要です。

海外介護人材に求められていること

介護の現場で外国人材に求められる能力、それはコミュニケーション能力です。文法や語彙などを暗記して、テストで良い成績を収める能力ではなく、「人と話す力」が求められます。介護現場で日本人の介護スタッフと協力して働き、成長していくためには、何かわからないことがあったとき、上手に周りの人に教えてもらう力、つまり、わからないことを自分で解決する力が必要です。

外国人に限らず、日本人にも同じことが言えると思いますが、わからないことを教えてもらう場合、その聞き方が上手かどうかは人間関係に大きく影響します。そして、良好な人間関係を築かなければ、何も教えてもらえません。いくらことばをたくさん知っていても、「人と話す力」がなければ、全く役に立ちません。

日本人に求められること

では、外国人材を受け入れる日本人側に求められることは何でしょうか。

先にお伝えしたように、外国人介護人材は国でかなりの時間、日本語を勉強して来日します。それでも、初めは全然日本語が通じないことが少なくありません。頭の中ではわかっていてもなかなか上手に話せませんし、簡単な言葉でも、日本人の言葉はうまく聞き取れないケースがほとんどです。

日本語能力を測る試験として「日本語能力試験」がよく知られていますが、この試験はコミュニケーションに主眼が置かれている試験ではなく、たとえN2、N3に合格していたとしても、母国で話す練習をする機会が少なければ、日本人との会話はスムーズにできないのです。

でも、介護の仕事をしている人は相手にどう言ったら伝わりやすいか考えて、話し方を工夫することができるはずです。例えば、耳が遠い利用者の方にゆっくり大きな声で話すなど、日頃から相手に合わせて、伝わりやすい話し方をしているからです。

残念ですが、日本語が通じないという理由で、外国人材に日本語を必要としない簡単な仕事や単純労働をさせる施設もあると聞きます。彼らは日本語に慣れていないことで、はじめは指示の通りに動けないことがあります。また、一度理解した指示でも、次に違う言い方をされると理解が難しくなり、すべきことをしなかったり、間違えたりします。

しかし、彼らは決して仕事ができないのではありません。日本語でのコミュニケーションに慣れていないだけなのです。彼らは母国で介護職に就くという志を持って学んでおり、日本へ介護の仕事をするために来日しています。受け入れる側の日本人にもコミュニケーションの取り方に少しだけ工夫があれば、十分に活躍してくれる人材であるはずです。

コミュニケーションの問題は外国人材が努力して日本語を勉強するだけでは解決できない問題といえます。日本人に求められることは、少しだけコミュニケーションの取り方を学ぶことです。学ぶといっても、ほんの少し「気がつく」だけでいいのです。では、何に気がつくべきなのでしょうか。

ちょっと次の表現をご覧ください。

熱を測る

体温を測る

体温測定

体温計を入れる

体温計を挟む

これらが表す行為は全て同じです。同じ行為を表すのに、日本語ではこんなにたくさんの言い方があります。このような言い方の違いは外国人にとっては難しく、混乱させてしまいます。

日本語がわからないことで失敗を繰り返し、周りの人をいらいらさせ、人間関係は悪化していくでしょう。でもこの場合、周りの日本人は悪くありません。私たち日本人が多様な表現を無意識に使っていることに加え、それが外国人を混乱させていることに気づいていなかっただけです。

この気づきさえあれば、専門用語や指示の表現を統一するなど、外国人にとって働きやすい職場を作る工夫ができます。この工夫に役立つのが「やさしい日本語」の考え方です。

「日本語ができない」=「仕事ができない」、だから「仕事をさせない」

これでは日本人スタッフへの負担が増え、日本人スタッフも不満を抱えるようになるでしょう。また、外国人からも介護の仕事をさせてもらえないという不満が出るはずです。コミュニケーションの工夫で、「できない」を「できる」に変えないといけません。

やさしい日本語へのヒント

介護の現場で働く外国人材は、母国である程度日本語を勉強して来日していますが、その語学レベルは人それぞれ違います。一緒に働く外国人材に合わせて、伝わりやすい日本語に変えていく必要があります。先にも述べましたが、介護職の方は、耳の悪い方には大きい声でゆっくり話すなど、伝えたいことを伝えやすくする方法を知っています。やさしい日本語への変換にも様々な方法があるので、ほんの少しだけご紹介します。

●伝えたい情報を整理して、いちばん重要なことを先にする
●文を短く、簡潔にする

私たち日本人が普段何気なく話していることの中には、本当に伝えたい重要な情報と、補足となる情報、不要な情報が混在しています。不要と思われる情報は削除し、優先順位を考えて、文を作りましょう。まずはいちばん伝えたい情報を伝え、補足情報はその後ろにすると伝わりやすいです。

日本語では大切な情報が文末にあって、最後まで聞かないと相手の伝えたいことがわからないことが多いです。しかし、文が長すぎると、集中力が続かず大切な情報を聞き逃してしまうかもしれません。文はできるだけ簡潔に、「一つの文に一つの内容」を心掛けるといいと思います。

●わかりやすい語彙を選ぶ

外国人が日本語を学ぶ場合の多くは、易しいことばから難しい言葉へ、単純な構造の文から複雑な構造の文へ、易から難への積み上げ型教材やカリキュラムが用いられます。

「入浴します」と「お風呂に入ります」。同じ内容を表す2つの表現がある場合、和語である「お風呂に入ります」は、多くの教科書で初級のかなり早い段階で扱われますが、「入浴します」は、扱われるとすれば中級以上の教材でしょう。初級段階で外国人が学ぶ動詞は漢語に比べて、和語が圧倒的に多いです。

「清拭」よりも「拭きます」、「歩行」より「歩きます」のほうが日本語に慣れていない外国人にとってはわかりやすいことばなのかもしれません。

「手伝ってください」

「手伝ってもらえますか」

「手伝ってもらえませんか」

「手伝ってほしいんですけど…」

「手伝えますか」

誰かに「手伝うこと」をお願いするときにも、私たちはその時の心情や相手との関係によっていろいろな表現を使い分けています。そして、丁寧にお願いしようとすればするほど、日本語の表現は複雑なものになっていきます。

上記の表現の中でいちばん単純で、誰もが初級初期に習う表現は「手伝ってください」です。それ以外の表現は、最悪の場合、指示されているということもわからないかもしれません。複雑な表現ではなく、少なくとも「~てください」と聞けば、指示されているということは誰もが理解できます。

このように、外国人材の日本語レベルに合わせてわかりやすい語彙や表現を使うことで、相手に情報を伝えやすくなり、外国人材も仕事がしやすくなることでしょう。

ただし、全てのことばをわかりやすい語彙に言い換えたほうがいいとは限りません。介護というのはとても専門性の高い仕事ですから、専門用語までやさしく言い換えることは必要ないと思われます。繰り返しになりますが、外国人材の多くが母国で介護について勉強をしているので、介護用語は言い換えをしない方が伝わりやすい場合もあります。

また、彼らは日本で介護福祉士の資格を取得し、日本で長く働きたいという希望を持っています。介護福祉士取得のためにも、介護の専門用語は積極的に使って覚えてもらうべきです。

やさしい日本語でやさしい施設に

ここまで「やさしい日本語」を外国人材とのコミュニケーションを円滑に行うためのヒントとして紹介してきました。しかし、「やさしい日本語」で期待できる効果はそれだけではないようです。外国人に介護業務の内容や手順をわかりやすく教えることで、普段の業務の見直しや整理ができ、日本人にとっても介護業務について理解が深まることが期待できます。

また、日頃からわかりやすく伝えることを意識することで、利用者の方に対してもわかりやすい話し方ができるようになるはずです。

外国人にとっては働きやすい職場は、実は日本人にとっても働きやすい職場であり、利用者にとっても居心地の良い施設となることは間違いありません。

「やさしい日本語」がみんなにとって心地よい、やさしい施設の実現につながればと思います。

Zenkenでは、日本人スタッフのためのやさしい日本語研修をご用意しています。詳しくは以下のページでご確認いただけます。ご興味がある方はお電話かお問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。

 

 

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