2023.11.01
人材不足が深刻化する介護現場において、海外人材は救世主になり得ると言っても過言ではないのではないでしょうか。しかし、海外人材を雇用するのにあたり、どのような在留資格があるのか理解しておくことが必要です。海外人材を介護職員として雇用できる在留資格は以下の4種類あります。
○特定技能「介護」
○技能実習「介護」
○在留資格「介護」
○特定活動「EPA介護福祉士」
ここでは、これら4種類の在留資格について、詳しく解説していきます。貴施設で海外人材の受け入れをご検討の採用担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
特定技能「介護」は、日本での就労を目的とした外国人の在留資格の1つです。介護分野において顕著になっている人手不足を解消するために、導入されました。
特定技能「介護」では、ビザの更新を1年・6ヶ月または4ヶ月毎に行いながら、通算5年まで日本で介護職員として働けます。特定技能「介護」で介護の仕事をする場合、介護福祉士の資格は必須ではありません。その代わり、はじめに特定技能「介護」の在留資格を取得するためには、日本語試験の既定レベルを取得し、介護特定技能評価試験に合格するといった要件を満たす必要があります。
ちなみに、「特定技能」とは、日本国内における生産年齢人口の減少に伴い、人材を確保することが難しい状況の産業分野に、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れることを目的とする在留資格です。2019年4月から、14業種の特定産業分野で、即戦力となる外国人の就労ができるようになり、介護も特定産業分野に含まれています。
「特定技能」には、「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があり、1号は全ての14業種、2号は14業種のうちの2業種が指定されています。介護は「特定技能1号」に該当します。
法務省によると、「特定技能1号」は、「特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」、「特定技能2号」は、「特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」とされています。
在留期間については、「特定技能1号」では上限が「5年」なのに対し、「特定技能2号」は在留期間の上限がありません。また「特定技能2号」においては、要件を満たすことができれば、家族帯同も可能です。
以下のページでは、特定技能「介護」で海外人材を受け入れるまでの流れやポイント、メリット、注意点をご紹介しています。あわせてぜひご一読ください。
特定技能「介護」による海外人材受け入れまでの流れ
技能実習制度は、日本で培われた技能や技術を開発途上国へ移転し、国際貢献を目的につくられました。
技能実習「介護」の外国人には、学歴や資格などの要件は基本的に求められません。1年目は「技能実習1号」、2~3年目は「技能実習2号」、4~5年目は「技能実習3号」となっており、合計で最長5年の滞在が可能です。
技能実習「介護」は、1993年に創設され、成熟している制度であると言えます。そのため。外国人の人材を採用しやすい在留資格でもあると考えられます。ただし、介護の知識を1から育成しなければならないことから、介護の業務をスムーズにこなせるようになるまでは、時間と手間がかかるでしょう。
在留資格「介護」は、介護福祉士養成学校を卒業し、国家試験の「介護福祉士」に合格することが条件の在留資格です。在留資格「介護」は制度として、2017年9月からスタートしています。在留期間の上限は設けられていないため、ビザの更新を行えば、永続的に日本で介護士として働くことができます。業務の制限もなく、特定技能や技能実習の「介護」資格では、不可とされている訪問系サービスにも従事させられます。
要件として、日本語能力がかなり高いレベルが求められるうえ、介護福祉士の国家試験に合格した人しか取得できない資格のため、その数には限りがあり、採用することは容易ではないと言えます。
外国人の介護人材を採用する企業が、介護福祉士養成学校の費用を出すケースもありますが、その場合は、1人あたり数百万円程の負担が必要になることがあります。
EPA(経済連携協定)に基づく在留資格です。日本の国家資格である介護福祉士に合格することを目的に入国し、実務経験を積むために、介護施設で働くことが認められています。
対象となる国籍はインドネシア、フィリピン、ベトナムの3ケ国のみです。4年間の在留期間内に介護福祉士の試験に合格した際は、在留期間の延長が認められ、介護施設で働くことを条件として、在留期間には上限が設けられず、永続的に日本で働くことが可能になります。
介護福祉士資格を取得できなかった場合は、在留期間1年の延長が許可され、もう一度介護福祉士の試験を受験することができます。1年延長した期間中に合格すれば、何年でも本人の希望により介護施設で就労することができますが、不合格の場合は帰国をしなければなりません。
前述で説明した、介護の仕事ができる4つの在留資格のメリットとデメリットを以下にまとめました。
制度 | メリット | デメリット |
---|---|---|
特定技能「介護」 | ・在留期間が長い ・試験合格や実務経験が条件になっているため、基礎的な介護知識があると言える ・現場で介護職員として働けるまでの講習が数時間で終わる ・定期報告・面談は3ヶ月1回で済むため、報告の負担が少ない |
・訪問系サービスに従事できない ・外国人材支援を内製化できない場合は、登録支援団体への管理費用が毎月発生する |
技能実習「介護」 | ・成熟している制度であるため、採用がしやすい ・意欲的な外国人が入社することにより、職場に活気が生まれる ・国内の監理団体が研修や面談などを行ってくれる |
・介護知識がない状態から教育する必要があるため、スムーズに業務ができるまでに時間がかかる ・訪問系のサービスに従事できない ・配属後6ヶ月間は人員配置に含められない ・資格や職務経験は条件になっていないため、現場で介護職員として働く前に3ヶ月程度の講習が必要 ・技能実習状況は毎日日誌に記録しなければならない ・監査報告書は3ヶ月に1回、事業報告書・実施報告書は年に1回提出する必要がある |
在留資格「介護」 | ・長期的な介護人材の確保ができる ・日本語能力が高いケースが多い ・介護に関する専門知識が豊富である ・訪問系サービスにも従事できる |
・人材数が限定的であるため、採用することが困難 ・受け入れ調整機関がないため、介護施設が自主的に採用活動をする必要がある |
特定活動「EPA介護福祉士」 | ・日本語能力が優れている ・母国での学歴などが条件になっているため、人材の質が一定している ・介護福祉士の資格を取得すれば、永続的に就労できる ・制度の目的が介護福祉士の育成であるため、国からの支援がある |
・日本全体で受け入れ人数が決まっていて、定員数にも上限があるため、採用が難しい ・採用決定から介護の現場に就く前の講習が1年程度と長い ・介護福祉士の資格取得のためには、450時間の実務者研修が必要 |
4つの在留資格のなかで、在留資格「介護」と特定活動「EPA介護福祉士」は対象者の人数が限定的なことから、比較的採用しやすい特定技能「介護」や技能実習「介護」を検討されることをおすすめします。
特定技能は、介護の事業所へ配属されると同時に人員配置基準に加えられます。しかし、技能実習で外国人の介護人材を雇用する際には、実習生を事業所に配属した後、6ヶ月間は人員配置基準にカウントすることができません。「人員配置基準に加えられない」ということは、国から介護職員として認めてもらえないということになり、その分の介護職員を雇う必要があるのです。
人手を集める必要がある新設事業所においては、施設が開所した後、3年間は受け入れができない技能実習より、特定技能のほうが優位と言えます。特定技能は新設の介護施設でも雇用が可能です。
また、特定技能は技能実習に比べて、海外介護人材の雇用受け入れ人数枠が大きいことも特筆すべき点でしょう。
雇用の義務についても特定技能は3ヶ月に1回、国へ計画通り業務が遂行されているかどうかを報告するだけで済むため、技能実習より簡素です。
技能実習の場合は、監理団体が国に報告ができるように、毎月、技能実習先の事業者と実習生との面談を個別に行い、出勤簿や賃金台帳を確認して労働基準法違反がないかどうかをチェックし記録します。
一方で、転職が認められている特定技能に比べて、技能実習では転職は原則許可されていないため、費用や時間、手間をかけて育てた人材の流出は最小限に抑えることができるでしょう。
また、技能実習から特定技能へ在留資格を変更することができれば、合計10年間日本で働けます。特定技能の場合は、最長でも5年の雇用期間となるため、5年以上働いてもらいたい事業所にとっては、まずは、技能実習で採用してから、特定技能へ変更するという方法が考えられます。
以上のことから、特定技能と技能実習のどちらが相応しいのかおすすめする事業所のケースをまとめると以下のようになります。
特定技能をおすすめする事業所のケース | 技能実習をおすすめする事業所のケース |
---|---|
・雇用後には、直ちに人員配置基準にカウントしたい ・新設された事業所で外国人介護人材を雇用したい ・多数の外国人介護人材を雇用したい ・雇用規制を最小限にしたい |
・転職の心配を最小限に留めたい ・1人の外国人介護人材を長期的に雇用したい |
事業者様においては、外国人介護人材の採用計画によって、特定技能と技能実習のどちらで外国人の介護人材を雇用するべきか、変わってきます。採用計画に照らし合わせて、それぞれのメリットとデメリットを十分に把握したうえで、重視する点に着目して、ご判断されると良いでしょう。