2024.08.20
少子高齢化で介護を必要とする高齢者の増加に伴い、介護士の不足が深刻な問題になっています。
今回は、介護士がどれくらい不足しているのか厚生労働省が公表している人数から介護の仕事を辞めた理由、人手不足解消の対策、介護人材の採用に成功するためのポイントまで徹底的に解説します。
介護施設のご経営者や採用ご担当者の方は、ぜひご一読ください。
厚生労働省は令和6年(2024年)7月12日に、第9期介護保険事業計画の介護サービス見込み量等に基づき、都道府県が推計した介護職員の必要数を公表しました。
これによると、2026年度には約240万人、2040年度には約272万人の介護職員を確保する必要があると推計されています。
公共財団法人介護労働安定センターが実施した「令和5年度介護労働実態調査結果」によると、介護従事者が直前の介護の仕事を辞めた理由の上位1位から5位までは以下の通りです。
第1位:職場の人間関係に問題があったため
第2位:法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため
第3位:他に良い仕事・職場があったため
第4位:収入が少なかったため
第5位:自分の将来の見込みが立たなかったため
第1位の「職場の人間関係に問題があったため」と答えた方に具体的な状況を尋ねたところ、最も多かったことから順番に挙げると以下のような結果でした。
また、介護の仕事を辞めた理由の第2位「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため」について具体的な状況を尋ねた結果は、ほぼ同水準で以下が挙げられました。
上記の結果を見ると、収入の低さより上司や同僚との人間関係や働いていた施設の経営理念・運営方針への不満が原因で退職するケースの方が上回っています。
人事評価や待遇を見直して給与面の改善を考慮する必要はありますが、介護職員の悩みや不満に対応する体制を整えることが重要であることが読み取れます。
出典:公益財団法人 介護労働安定センター「介護労働実態調査」
介護職員の人材不足に直面している施設は少なくありません。人手不足の問題解決にはどのような方法があるか、具体的に対策をご紹介していきます。
前述の調査結果の通り、人間関係に悩んで退職する方や所属する施設や事業所の理念や運営に対する不満を抱いて辞める方が上位を占めています。これらの問題を解消し、介護現場の人手不足を解決するためには、相談窓口や相談員の設置をおすすめします。
介護現場では、職員間の人間関係が円滑であることが重要です。相談窓口や相談員を設置することで、職員が抱える人間関係の悩みを早期に察知し、適切なサポートが可能になります。相談員は、職員の悩みや不安を聞き取り、対話を通じて解決策を見つける役割を果たします。
介護職は精神的に負担の多い仕事です。相談員は、メンタルヘルスケアの専門知識を持ち、職員が精神的に健康でいられるよう支援できると良いでしょう。定期的なカウンセリングやストレスチェックの実施、メンタルヘルスに関する研修を通じて、職員の心の健康を守ります。
施設や事業所の理念や運営に対する不満を解消するためには、職員の意見を積極的に取り入れることが必要です。相談員は、職員からのフィードバックを集約し、経営陣に伝える役割を担います。これにより、現場の声を反映した運営方針の見直しや改善が可能となり、職員の満足度向上に繋がります。
介護現場の人手不足を解消するためには、労働環境の改善も不可欠です。以下の点を重点的に取り組むことで、介護士の働きやすさを向上させ、長期的な人材確保に貢献できます。
介護職は他の職種と比較して賃金が低いと言われています。このため、賃金の見直しは重要な課題です。市場の平均賃金と比較し、競争力のある賃金を設定することで、介護士のモチベーション向上や新規採用の促進が期待できます。
安定した経営は、介護士にとって安心して働ける環境の基盤となります。経営の健全化を図り、給与の遅配やリストラのリスクを減らすことで、職員の離職率を下げることができるでしょう。また労働条件の安定化は、長期的な雇用関係の構築にも寄与します。
充実した福利厚生は、従業員の満足度を高める大きな要因です。具体的には、育児休暇や介護休暇の整備、健康診断の実施、社員旅行や福利厚生施設の利用などが挙げられます。これらの取り組みは、介護士が仕事とプライベートのバランスを取りやすくし、職場への定着を促進します。
介護の質を高めるためには、継続的な教育研修が必要です。最新の介護技術や知識を習得できる研修プログラムを用意することで、介護士のスキルアップを支援します。さらに、キャリアパスを明確にし、昇進やスキルアップの機会を創ることで、従業員のやる気を引き出します。
介護施設の方針や理念は、職員の共感を得る重要な要素です。介護の現場で働く意義や、施設が目指すビジョンを明確に示すことで、従業員のモチベーションを高めます。魅力的なビジョンを持つ施設は、職員からの信頼を得やすく、採用活動においても優位に立つことができます。
介護現場の効率化と質の向上を図るために、IT技術やシステムの導入は重要な対策の1つと言えます。以下の取り組みを通じて、介護士の負担軽減とサービスの向上を目指します。
介護現場では多岐に渡る業務が発生します。スケジュール管理や記録のデジタル化、電子カルテの導入など、業務効率化ツールを活用することで、手作業の負担が軽減され、介護士が直接ケアに集中できる時間を増やせます。
介護ロボットの導入は、介護士の身体的負担を減らせる有効な手段です。移動支援やリハビリテーション支援、見守りロボットなど、多様なロボット技術を活用することで、介護の質を向上させるとともに、介護士の負担を軽減します。
ICT(情報通信技術)を活用したコミュニケーションツールの整備も重要です。職員間の情報共有を円滑にし、利用者やその家族とのコミュニケーションをスムーズに行うことができ、より良いサービスの提供が可能になります。
日本の少子高齢化に伴う介護士不足を解消するためには、外国人介護人材の採用も有効な対策の1つです。以下の点を考慮しながら、外国人介護人材の採用と定着を進めます。
外国人介護人材が安心して働ける環境を整備することが重要です。外国人介護人材を受け入れる際には、多文化共生の考え方を取り入れ、文化の違いを理解し、尊重する姿勢を持つことが求められます。また、言語の壁を克服するためのサポートも欠かせません。
外国人介護人材の採用には、在留資格の取得や法的な手続きが伴います。これらの手続きをスムーズに進めるためのサポート体制を整えることが重要です。また、外国人労働者向けの生活支援や情報提供を行うことで、安心して働ける環境を整えられます。
外国人介護人材を受け入れる際には、職場全体の受け入れ体制を強化する必要があります。外国人職員だけではなく、日本人職員に対しても研修やオリエンテーションを実施し、お互いの異文化理解を深めることで、円滑な職場環境を築くことができます。
Zenkenは、登録支援機関として、特定技能外国人介護人材の受け入れをサポートしています。在留資格取得の申請から入国後のオリエンテーションや生活支援、日本語や介護福祉士国家試験対策の教育まで、ワンストップで支援します。
また、日本人介護職員向けに、外国人介護人材とのコミュニケーションを円滑にするための「やさしい日本語研修」や「異文化理解研修」もご用意しています。
外国人介護人材の採用や教育、日本人介護職員を対象とした研修をご検討されている方は、お気軽にお問い合わせください。
介護現場の専門性を高め、利用者の方に質の高いサービスを提供するためには、資格取得支援制度の導入が有効です。以下の取り組みを通じて、介護士のスキルアップとキャリアアップを支援します。
資格取得にかかる費用を補助することで、介護士が積極的に資格取得に挑戦できる環境を整えます。受験料や研修費用の補助を行うことで、金銭的な負担を軽減し、学びの機会を提供します。
資格取得のための勉強時間を確保するために、勤務時間の調整を行います。柔軟なシフト制度を導入し、学業と仕事を両立できる環境を整備することで、資格取得への意欲を高められるでしょう。
資格取得に向けた社内研修を充実させることで、介護士のスキルアップを支援します。専門知識や技術を学ぶ機会を創出し、職員のモチベーションを向上させることができます。また、研修を通じて職員間の交流を促進し、チームワークも強化されます。
以上のポイントを踏まえて、応募者とのコミュニケーションを大切にし、採用プロセスを円滑に進めることが成功の鍵となります。
それぞれのポイントについて、見ていきましょう。
介護の現場では、技術や経験も重要ですが、それ以上に大切なのは人柄です。利用者と直接接する仕事であるため、思いやりやコミュニケーション能力が求められます。応募者の人柄をしっかりと見極めることで、現場の雰囲気を良くし、利用者に安心感を提供することができます。
面接は、応募者がその職場について第一印象を持つ大切な機会です。丁寧な対応を心掛けることで、応募者に対する尊重の意を示し、信頼関係を築く第一歩となります。応募者がリラックスして自分を表現できる環境を整えることで、より正確な評価が可能になります。
採用プロセスにおけるレスポンスの速さは、応募者の意欲を保つために非常に重要です。早めの対応は、企業の迅速さと効率性を示し、応募者に対しての関心を提示できます。また、他の企業との競争においても優位に立てるでしょう。
応募者にとって、待遇や福利厚生は非常に重要な要素です。具体的な内容を詳しく説明することで、企業の魅力をアピールできます。例えば、給与、休暇制度、健康保険、研修制度などについて明確に伝えることで、応募者に安心感を与え、入職後のミスマッチを防ぐことができます。
応募者に対して、将来的なキャリアパスについての説明を行うことは重要です。成長の機会や昇進の可能性を具体的に示すことで、応募者の長期的なモチベーションを高めることができます。また、応募者自身のキャリア目標を確認し、企業と一致するかどうかを見極めることも大切です。これにより、長期的な雇用関係を築くことができるでしょう。
介護施設の経営者や採用担当者の方にとって、介護人材の確保と定着は、少子高齢化が進む中で、事業の継続に欠かせない課題です。今回ご紹介した対策を実施することで、職員の満足度向上と離職率の低下が期待されます。
まず、職場環境の改善には、職員が気軽に相談できる相談員の配置が重要です。これにより、職場の人間関係が向上し、働きやすい環境が整います。
次に、業務効率化ツールや介護ロボットなどのIT技術を導入することで、職員の負担を軽減しながら、介護の質を向上させることが可能です。さらに、外国人介護人材の採用も有効な選択肢として検討すべきでしょう。
これらの対策が参考になれば嬉しいです。
Zenkenは特定技能人材の登録支援機関です。特定技能で海外介護人材の受け入れをご検討されている方のために、特定技能人材を選ぶメリットから受け入れまでの流れや事例まで詳しくご紹介している資料を以下より無料でダウンロードいただけます。ご興味・ご関心がある方はぜひご活用ください。
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